ね? と同意を求める椿ちゃんに、相沢くんはふん、と鼻で笑った。


「その邪魔のおかげで、今があるんじゃないのか」


「うるさい。あっと、ここで立ち話しててもよくないわね。早く、中に入りなさい」


「あ、はい。じゃあ、おじゃまします」


椿ちゃんに背中を押されるようにして、広い玄関へと入った。


そこに立っていた相沢くんは、大きめのシャツにジーンズを履いた、ラフな格好だった。


「あ、こんにちわ、です」


見慣れない私服姿にどきどきしてしまう。
考えてみたら、制服と、剣道着と体育の時のジャージ姿しか知らないのだ。


「ん。こっち」


相沢くんはそんなあたしの事なんてお構いなしに、さっさと行ってしまう。

うう、マイペースだ、この人。
少しくらい、今日はかわいいなとかそんな事挨拶変わりにでも言ってくれたらいいのに。

いや、そんな相沢くんはちょっと気持ち悪いかも。


と、色々考えていたら先にどんどん歩いていた相沢くんがぴたりと止まった。


「ゆいこ!」


「なーにぃー?」


「ユキと二人して、のこのこ部屋に来るなよ」


「はあーい」


相沢くんの言葉に、椿ちゃんがくすくす笑う。


「あと、アレを頼むな」


「はいはい」