「相変わらずアバウトだな。大ざっぱって言うか」


「あら。こんなに腫れてるのよ?
ちまちま氷のうで冷やすよりも一番手っ取り早いじゃない。
ほらっ、突っ込みなさいってば」


椿ちゃんはがしっと足を持つと、えいっとバケツに入れた。


「っつうー……っ。痛えだろ、ゆいこっ」


「我慢しなさい」


顔をしかめる相沢くんに、椿ちゃんはあっさり言う。
相沢くんはそんな椿ちゃんを軽く睨んだ。






……ゆいこ?

さっきから、相沢くん、椿ちゃんのこと、

名前で呼んでない?



相沢くんへの申し訳なさや、あたしへの優しさへの感動で胸いっぱいになっていたあたしの体が、
バケツに蹴り落とされたようにすうっと冷えた。


ゆいこって、呼んでる。
さっきまであたしには不機嫌極まりない態度だったのに、
椿ちゃんにはごく普通で。



ああ、そうだよね。
相沢くんは、椿ちゃんが好きだったんだっけ……。

あは、うっかり忘れてた。

そっか、そうだよね。
あたしなんて、何とも思ってなくて……。