つらっと言う椿ちゃんに、相沢くんは諦めたように溜め息をついた。


「……別に、大して痛くない。湿布貼ってりゃあ、いい」


「……うーん、骨折はしてないようね。今からアイシングの用意するわ」


椿ちゃんはバタバタと部屋の奥にある冷蔵庫へ走って行った。
ガチャガチャと氷のうを作っている音がする。


あたしは、しかめっ面のままそっぽを向いている相沢くんを見た。


そんな酷く足を痛めてたのに、あたしを助けてくれたの?

痛いはずなのに、あたしをここまで連れてきてくれたの?

真っ赤に腫れた足で、何で何も言わずにいたの?


さっきの荒い息づかいや、額ににじんでいた汗は、痛みからだったのかもしれない。



「……相沢くん、あり、がとう」


相沢くんの足を見ると、涙がでそうになる。

何で、そこまでしてくれたの……?


「別に」


相沢くんはこちらをちらとも見ずに答えた。




「ほらっ、この中足突っ込んで!」


椿ちゃんが、バケツに氷をがっつり入れたものを持って来た。

ガランガランと鳴るそれを、相沢くんの前にどすんと置く。