「離せー! この仏頂面オトコー!」


暴れるあたしをものともせず、相沢くんは保健室まで歩き、扉を開けた。


「あら? 騒がしいけど、なあに?」


椿ちゃんの声がした。


「あららあ? どうしたの?」


「こいつを診てやってくれ。怪我してる」


相沢くんはようやく、あたしを下ろしてくれた。
保健室の長椅子にあたしをゆっくりと座らせる。


それから自分は、近くにある椅子にどさりと座り込んだ。


「二人とも、一体どうしたって言うの」


困った様子の椿ちゃんが、あたしに駆け寄って来た。

顔や肘の傷を見て、次に両手の傷を見て顔色を変えた。


「この傷……。何されたの?」


「あ、えと……」


何て言おう。怪しいよね、こんな傷。


「バカが一人、イタズラをしかけたんだよ」


足を投げ出すように座った相沢くんが、低い声で言った。
ちらりと見ると、汗をかいて荒い息を吐いていた。

さっきあんなに暴れたから、体力を消耗したのかな。
旧体育倉庫からここまではずいぶん距離があるし……。

少し申し訳なさを感じて俯いた。