「片桐くん! そのほっぺたどうしたの!?」


「あ、いや、それは……」


「片桐。旧体育倉庫に行け。木村をあいつが一人で見張ってる」


一向に足を止めない相沢くんが捨てるように言う。

片桐くんはかあ、と顔を赤く染め、何か言いたげに口を開いたけど、閉じた。


「……分かった」


「ちょ、ちょっと! そんな言い方ないじゃない!? 心配してくれてるんだよ?」


「そいつは自業自得だ」


冷たい声。

何なの?
もう意味分かんない!

分かんないけど、その言いぐさはムカつく!


「何よ何よ! 最低! 相沢のバカ!」


あたしはバコバコと相沢くんの背中を叩いた。
相沢くんは怯んだ様子もなく歩く。


「鈴奈、いいんだ。じゃ、紗希ちゃんが大変だろうから行くよ」


片桐くんは小さく手を上げて、悲しそうな笑みを浮かべて走って行ってしまった。


「バカ! 離して! 下ろして! 相沢のバカたれー!」





ますます人目を引いているのが分かったけど、あたしは構わずに罵声を上げ続けた。