「重くない。いいから黙ってろ」


またもやぴしり。


な、何なのよ。
心配して言ってるのに!

さっきからえらく不機嫌な相沢くんに、あたしはだんだんイライラしてきた。


勝手に来て、勝手に担いで、勝手に運んでさ。

そりゃ助かって嬉しいけど、でも何も今こんな態度とらなくてもよくない?

あたしは相沢くんを怒らせてた。それはよく分かってるけど、そんなに嫌ならさっさと下ろせばいいのに。


もう、腹たった。
ぷう、と膨れたあたしは、もう知るかとばかりにだらーんと体の力を抜いた。

さっきまで、色々気になって力を入れてたのだ。

だけどもう知らない。
だらだらぶらぶらしたあたしを、さっさと保健室まで運んでくれたらいいんだ。



「鈴奈!!」


ぶらんぶらんと腕を揺らしていたあたしを呼ぶ声。
ん? と顔をあげると、片桐くんが立っていた。

歩みを止めない相沢くんを追って、バタバタと駆け寄ってくる。


「よかった。探したんだ。大丈夫か?」


「ん。大丈夫、ありがとう」


そうか、片桐くんもあたしを探してくれたんだ。

ありがたいなあと顔をみた片桐くんの片頬は、赤く腫れていた。