自由になった両手首を見ると、皮膚がこすれて血が滲んでいた。
暴れた時に、傷つけてしまったらしい。
足首も同じように怪我していて、靴下に血がついていた。


必死だったから、今まで痛さなんて気付かなかったな。


「ここも擦りむいてる。あとは大丈夫? 何もされなかった?」


何回も転んだから、多分その時に怪我したみたい。
肘と、左のこめかみも怪我していた。


「ん。すんでのところで助かった……」


こくんと頷くと、緊張した顔の紗希が、でっかい溜め息と共にほころんだ。


「ああ、よかったー。間に合ってよかったよ」


紗希があたしをぎゅっと抱きしめた。


「怖かったでしょ? よく頑張った!」


ぽんぽん、と背中を優しく叩いてくれる。


「うう、紗希……。泣きそうだから、止めて……」


あたしも紗希を抱きしめ返した。

怖かった、誰も助けに来てくれないのかと思った。


我慢しても涙が溢れそうで、必死にこらえていると、紗希があたしの体を離して言った。


「鈴奈、ここから離れよ。とりあえずは、保健室。怪我の手当てしないと。それにすごく汚れてるから、着替えもしよ」