「んーーっ! んんんむうんーー!!」


口に布を噛ませられたあたしは、さっきからずっと声を上げていた。


助けてー! 誰か来てーー!!


そう叫んでいるのに、一向にちゃんとした声にならない。

でも、仮に声が出たとしても、誰にも気付かれないかもしれない。
そう不安になるくらい、人の気配がしなかった。


今は昼休み。
今頃みんな食堂や購買にいて、体育館には誰も残ってないのかもしれない。


誰か、来て。


「んんーー! んんんむうんーー!」


再び声を上げる。
無駄だって分かってても、出さずにはいられない。


手足をバタバタ動かしてみても、4つの輪っかはあたしの体をいたずらに痛めて、土埃を舞いあげるだけ。

声を上げる度に息苦しさが増して、自然と荒くなった鼻呼吸は埃を吸い込んで、息苦しさがもっと酷くなる。

えほん、えほんとむせていると、苦しさのあまり涙がでてきた。


うう、ちょうどいいや。
細かい土埃は目について、さっきからチクチク痛かったんだ。


流れる涙は拭えないけど、とりあえず泣いちゃえ、とあたしはせっかくなのでぐずぐず泣いた。