「いないって、どういうことよ?」


「分からん。倉庫の外にも中にも、誰もいない。特に変わった様子もない」


「そうだ! あのねっ、木村が怪しい! 鈴奈を好きなやつで、片桐の嘘を多分信じてる」


「木村? どいつだ」


「あたしたちと同じクラスの、いっつも成績上位にいる奴!」


荒い息を吐いていた相沢が、ぴくりと動いた。


「それって、メガネの奴か?」


「そう! インテリメガネ!」


相沢が、走ってきた道を振り返った。


「……さっき、見かけた、な」


「え? どこで!?」


「校舎の昇降口、だったか」


「昇降口、そっか……」


昇降口って、普通の場所だよね。
人通りもいっぱいあるし。

木村が校内に普通にいたってことは、鈴奈とは関係ないの?

あたしの思いつき、間違えてたのかな……。


「片桐」


振り返った相沢が、片桐を見た。


「何、だよ」


「お前、出場競技のリスト作っただろ。木村の出場競技、何か覚えてるか?」


「ああ。確か、バスケ、だったな」