鈴奈情報で隠れゲーマーが判明した木村は、
片桐同様に、鈴奈とヨリを戻したいと再三あたしに言ってきていた奴だ。

しつこいくらい言われてウザイ思いをしていたけど、
そういえばここ最近、何も言ってこなくなってっけ。


それも多分、片桐の嘘を本気にしていたからなんだろうけど……。


「何で木村にまで言うのよ! バカ!」


「だから、鈴奈を誰にもやりたくなくて……」


キレたあたしに、片桐は小さな声でもごもごと答えた。

ホンットにこいつはバカ。バカ一号。
自分のものでもないのに、独占欲見せんな。

罵倒の言葉が溢れそうなのを飲みこんで、あたしはぎゅっとこぶしを握った。


「……とりあえず、一言だけ言わせてもらうわ。この件が一段落したら、あたしもあんた殴るから」


「さ、紗希ちゃ……」




片桐の赤くなった右頬がひくついて、情けない声をあげた時。


「鈴奈、いないぞ!」


息を切らした相沢が走ってきた。
流れる汗を、無造作に拭った顔はぴんと張り詰めていて、
その中にある怒りを静かに滲ませていた。