「鈴奈がいなくなったのよ。あんたに体育倉庫に呼ばれて、行ってくるって言ったまんま、戻ってこない」


しぶしぶ答える。


「え!? いつからだよ?」


「昼休み前から。相沢からあんたが蒔いた噂の話聞いて、急いで体育倉庫に向かってたら、あんたが脳天気に声かけてきたの」


もういいでしょ? と手を振り払う。


「鈴奈、誰に呼び出されたんだ……?」


「こっちが知りたいの! タチの悪い冗談だったらいいけど」


そう。
誰かの悪ふざけならいいけど、わざわざ片桐の名前を使ったりしてる辺りが気になる。
しかも体育倉庫なんて、人があまり行かないようなところだし……。


「鈴奈を呼び出しそうな奴、知らねーのかよ」


「知ってたら苦労しないでしょ。つか、あんたこそ知らないわけ?」


まさか、こいつを好きな女が鈴奈を呼び出したとか?

いや、それはない、な。

鈴奈と別れて以来、ずっとフリーだった片桐に熱心に寄ってくような子、いなかったもんな。

片桐の顔を見て、ふ、と気付く。


「ねえ。あんたさあ、鈴奈と付き合ってるとかいう話、相沢以外にも、した?」


「あ? 今はそんな話してる暇」


「いいから答えて! した?」