kiss-choco

「片桐が鈴奈を体育倉庫に呼んだんでしょ? 鈴奈、どこよ」


おっと。相沢の勢いに押されちゃってた。

あたしは睨みあっている二人に割って入るようにして、片頬を赤くした片桐に聞いた。


「意味わかんね。オレ今までずっとテニスコートにいて、体育倉庫なんて行ってないぜ。鈴奈も呼んでない」


「え? 本当に?」


片桐は相沢を睨みつけながら、頷いた。


「テニスコートにいた奴探して、聞いてみろよ。オレは今までずっとコート横にいたぜ」


片桐の声や表情には、嘘をついている様子はなかった。


「じゃあ、鈴奈は誰に呼ばれたのよ?」


鈴奈が、体育倉庫に行くと言って保健のテントを出てから、随分経っている。


「鈴奈、どうかしたのか?」


「お前に関係ない。本当に知らないのか?」


吐き捨てるように言った相沢にとうとうキレたのか、
片桐が相沢の胸ぐらを掴んだ。


「一体何なんだよ、お前! 鈴奈はなあ、オレの」


「彼女だとでも、言うわけ?」


あたしがすかさず言うと、片桐の顔がとたんにうろたえた。