「どーしたもんかなー……、と」


グラウンドの方から、誰かこちらに向かってきている。

近付いてくるにつれ、それがしかめっ面をした相沢だということに気がつく。

ひょこひょこした歩き方を見ると、足でも捻ったのかもしれない。


「ふん、ざまあみろってんだ」


鈴奈に何かした罰だね、きっと。
あたしは鼻でふふんと笑った。

ゆっくりとした歩みで来た相沢は、テントの隅にいるあたしを見ると、ぷいと顔を逸らした。


「あら、もしかして捻挫?」


他の怪我人の様子を見ていた椿ちゃんが、突っ立っている相沢に気がついた。


「……少し捻った。湿布があれば、欲しい」


「湿布だけで大丈夫なの?」


「ああ」


「痛みや腫れが酷かったらまた来るのよ。
ごめんなさい、その箱に湿布が入ってるの。取ってあげてくれない?」


椿ちゃんの最後の言葉は、どうやら隅っこでぼんやりしているあたしに向けられたようだ。


「え? ああ、はい」


「ごめんね。今ちょっと手が離せなくって」


立ち上がったあたしに、椿ちゃんがぺこっと頭を下げた。