木村くんは服をあたしに渡すと、あっさり体を離した。


と、とりあえず変なコトはされそうに、ない?

いや、この服着ろとかそれだけでも変なんだけどさ。


木村くんが離れたのを見て、あたしは慌てて立ち上がった。
どうなるか分かんないんだから、スキは見せられないし!



「さ。着てみてよ」


「む、むり! いきなりそんなこと言われても!」


あたしはぶんぶんと首を横に振った。


「困ったね。じゃあ、僕が手伝ってあげるよ」


木村くんが、あたしのジャージの裾に手を伸ばした。


ぎゃーーっ!
さっきの訂正!

やっぱ変なコトされる!


「やだやだやだやだ!」


「ほら、暴れないで」



リーン、ゴーン……
    リーン、ゴーン……


その時、昼休みを告げるチャイムが鳴った。


体育館では試合が終わったのか、歓声がひときわ大きく聞こえた。


こんなに音が溢れてたら、あたしが叫んでも暴れてもきっと誰も気付いてくれない。



「ほら、鈴奈ちゃんってば」


「やだやだやだやだやだやだやだやだ!」


ジャージにがっちり手をかける木村くんに、あたしは座り込んで体を丸めるようにして逃げる。

とは言っても、やっぱり男の人。
いくら文系だと言っても、力は女のあたしよりもあるわけで。

このままだと押し負けちゃう!