「き、木村くん!? 何!?」


い、意味わかんない!

けどこれって、異常じゃない!?
ヤ、ヤバいんじゃないのーっ!?


あたしは上体を起こして、木村くんから少しでも離れようと後ずさった。

広くない体育倉庫はあっという間に背中に壁があたった。
柔らかいから、立てかけているマットなのかもしれないけど、今は振り返って確認は出来ない。


「僕さ、あれからずうっと鈴奈ちゃんが好きだったんだ。もちろん、今も」


木村くんは楽しそうに言い、ゆっくり一歩踏み出した。


ぎゃーーーー!

怖いーー!

何これーーー!


「あああああああああああたし!
すすすすすすきなひといるからっ!」



「知ってるさ。あいつだろ」


うろたえてどもるあたしに、木村くんは初めて苛ついたように言った。


「あいつは、鈴奈ちゃんには似合わないよ。不純な恋愛は、傷つくだけだよ。
鈴奈ちゃんには、僕が一番いいんだよ?」


木村くんは再びにこりと笑って、一歩近づく。



ぎーーやーー!

どうしよう!


あたしはばっと立ち上がって、どうにか木村くんから逃げられないか、そっと倉庫を見渡した。


倉庫は出入り口は木村くんの背中に一つきり。
窓はあたしの背より高いところに、小さなものが二つ。


逃げ道、ないじゃん!