近くで見られるはずがないよ。


ついっとグラウンドに目をやると、すぐに相沢くんを見つけられた。

表情までは掴めないけど、でもきっと、いつもの仏頂面を浮かべてるんだろうなって思う。


あの仏頂面が、あたしのせいで怒りを滲ませるのを見るのは、辛い。


「鈴奈ぁ、あんた……」


「あ! 広瀬さん、戻ってきてたのね。探しちゃったわー」


頭の上から、椿ちゃんの声が降ってきた。


「あ、ごめんなさい。ちょっと休憩してたから」


「あ、いいのいいの。あのね、片桐くんから伝言。
体育倉庫に来てって」


「へ? さっきは何も言ってなかったけどなあ」


「備品が足りないところがあったのかしらね? とにかく、行ってみてくれる?」


「はあーい」


立ち上がって伸びをする。


「紗希、ちょっと行ってくる」


「うん。早いとこ戻ってきてねー」


グラウンドの横を駆けて行こうとして、野球の試合をちらりと見る。


試合は相沢くんのクラスが勝ったところのようだった。