「お父さんが反対しても 子どもは生まれてくるんだ 

いい加減に許してやればいいのになぁ 何に反対しているの」


「結婚は早すぎるって……それに葉月の態度が気に入らないみたいなの 

気持ちはわかるんだけど」 



朋代さんの話はこうだった

来年の春 交際相手の転勤が決まっているそうで それにあわせて結婚しようと

二人の間で約束が出来ていたそうだ

親にも紹介して許しをもらわなければと 父のもとに挨拶に来て いきなり 

まだ早いと反対された

その後も彼の訪問があったが父の答えは同じで 葉月との話し合いは平行線 

そんなとき葉月の妊娠がわかって ますます父の態度は硬化したということ

だった



「何より順序が違うって言うの」


「はぁ? 順序が違うって あはは……親父らしいや 

それまで葉月が付き合ってるの知らなかったの」


「いえ 知っていたわ 彼は衛さんと同じ職場なの 葉月の大学の先輩で 

若いけれど優秀な部下だって

葉月にも話していたのよ 同じ局内にいるし 

交際しているのは耳には入っていたんでしょう」


「お父さんのお墨付きの男だってことで 

葉月も安心して付き合ったってたんじゃないの」


「それがねぇ 二人は学生時代からのお付き合いらしいの 

葉月は彼を追いかけて入省したの」


「あはは……お父さんと同じ職種を選んだんじゃないんだ」



朋代さんのため息交じりの苦笑いに 一緒に笑いがでてきた

娘が自分の背中を追いかけて同じ仕事に就いたと信じていたのが 

実はそうではなかったと言われたわけだ

ましてや 追いかけたのは交際相手だったなんて……

そんないきさつを聞いて 父が反対する気持ちがわからなくもなかった



「葉月も悪いの お父さんが認めてくれないのなら家を出るって 

もう親の許しはいらない歳だからって 

何かと言うとそう切り返すものだから 衛さんも つい感情的になって 

そんなことは絶対に許さないって 

それに葉月も言い返して 話し合いにならないの」



似たもの親子だね そう言うと えぇ……強情なところは私に似たのかしらと 

朋代さんの深いため息がもれてきた

まずは帰国の報告をして 話はそれからだ

何食わぬ顔で親父に会ってくるよと 沈んだ顔の朋代さんに冗談をいい 

僕らは父の書斎へと向かった