文句を言いながらも計算を始めた葉月を残して ひと息つこうと飲み物を飲みに

キッチンに行った



「ごめんなさいね あの子 この頃反抗期みたい 

女の子は早いと聞いていたけど 私の手にも余るときがあるの」


「ホント生意気だね わかってるんだけど僕もつい言い返して 

でも一人じゃ兄弟げんかもできないから」



リビングを見ると 実咲が葉月の様子を見てくれていた

ここはこうするの わかる? なんて優しい言い方に 葉月も素直に頷いている



「……そうね 葉月ひとりだから つい何でも聞いてしまって」


「僕もそうだったから それもいいんだけど 友達から兄弟でしょっちゅう

ケンカしてるって聞くと ちょっと羨ましかったり 

だけど まさか9歳も下の妹と真剣にケンカをするとは思わなかった 

まっ 葉月がいたから経験できたんだよね だけど ホント腹立つなアイツ」



朋代さんは笑って聞いていたが その目は潤んでいた

今にも零れそうな涙に気がついて 僕はわざとあらぬ方向を見た


朋代さんの涙のわけはわかっていた

生まれた子どもを僕がどう思うのか 僕が寂しい思いをするのではないかと 

ずい分思い悩んだことだろう


”葉月を産んで良かった……” 泣き崩れた姿が思い出された


葉月がいてくれて良かった ケンカをしても妹は可愛いよ 

そう朋代さんに伝えたくて 僕は葉月の生意気さをしゃべり続けた