朋代さんの ベタつかない さらりとした雰囲気は 会えば何かと口うるさい

僕の母にない部分でもあり 僕と朋代さんの関係は 理想の親子の距離を

保っているようにも思えていた

そんなことを考えていたら 実咲が僕の母についてしゃべりだした



「この間 初めてお会いしたけど 賢吾のお母さんも素敵ね 

キリッとしててカッコいいもの」


「お袋はあんな仕事をしてるから そう思うんじゃないか」


「そうかもしれないけど……退院の日 賢吾のマンションに一緒に行ったの」


「一緒に行った? 聞いてないよ 変なモン見られなかったかな 

上手く隠してくれたんだろう?」


「さぁ 見られたかも……」



仕事があるからと帰ったはずなのに 僕のことが心配だったのだろう 



「だって 私が部屋を片付けたらおかしいじゃない 

お母さん お掃除して帰られたのよ」


「えっ? 掃除したって」


「うん でも 部屋は綺麗にしてるし お風呂場とかトイレも汚れてないから 

実咲さんがしてくださってるのって聞かれちゃった」


「そうなんだ……」


「少ししかお話できなかったんだけど 部屋を見て安心したんだって 

ちゃんと生活してるのがわかったって

賢吾をお願いしますって言われちゃった 

私が賢吾を危ない目に遭わせたのにね なんかジーンときて……」



実咲が母をこんな風に見てくれていたことも嬉しかったが 実咲を介して

伝えられる母親の言葉に 僕が思う以上に心配していた親の思いが見えてきた



「実咲を気に入ったんだろう でなきゃ そんなこと言わないよ」


「お仕事の話も聞かせてもらったのよ すごいわね 

たくさんのスタッフを抱えてお仕事されてるんだね」



退院の日 僕を東京に連れて帰るつもりだったのだろう

または 数日こっちにいて 様子を見てから帰るつもりだったのかもしれない

そう考えると 仕事で急ぎ帰らなければいけないと言っていたのは 

口実だったのかとさえ思えてくる


実咲は母から聞いた フードコーディネーターの仕事の話を続けていたが 

あの日の母の寂しそうな顔を思い出し 今夜にでも電話して 順調に

回復していると伝えて安心させてやるかなんてことを考えていた