退院の日 一旦東京に戻った母もやってきて 父と僕を交えて 

今後の話し合いがもたれた



「大学はしばらく休んで家に戻ってらっしゃい 

頭も東京の病院でもう一度検査した方がいいわ」


「休めないよ ここで単位を落としたら卒業できない 

頭は大丈夫だって先生も言ってた」


「でもね もしもってことがあるでしょう 

一年ぐらい留年してもいいじゃない 体のほうが大事なのよ」


「やだよ 就活だってあるんだ 戻らない」



僕と母の平行線の会話に それまで黙って聞いていた父がようやく口を開いた



「賢吾は私が預かるよ マンションは大学からも近い 

時間が合えば送ってもやれるだろう」


「でもそれじゃ……奥様にご迷惑がかかるわ……」


「お父さん 頼む お母さん そういうことだから」


「そういうことだからって そんなに簡単じゃないのよ」


「賢吾の言うとおりにさせてやろう」



でも……と 母親は納得のいかない顔をしていたが 頭の検査を他の病院で

もう一度受けることと

決して無理はしないという約束をさせられ ここに残ることを承諾してもらった


退院の手続きを済ませると 抜けられない仕事があるから帰るわねと言った

母の顔は寂しげで 本当は僕を連れて帰りたかったのだろう

ここに残ると言い張ったことを 少しだけ後悔した