昼は要さんの一家を加えて庭でバーベキューが始まり この日ばかりは

祖父もベッドから起きて縁側に座って 僕らを眺めて嬉しそうだった



「お母さんはお元気?」


「はい また本を出すみたいで 撮影や取材だと忙しそうにしてます」


「そうなの ご活躍なのね 良かった……」



祖母は安心したように頷き 僕を慈しむように見ながら言葉を続けた



「こんなに立派になって……東京のおばあさま方のおかげね 

5年前も心配したけど 賢ちゃんがしっかりしてたから」


「そんなんじゃないです 親には親の考えがあるのかなと思って 

それだけです」


「でもね みんな心配してたのよ だから……」


「ここに来て楽しかったですよ 海釣りに行ったこと 

友達に散々自慢しました 東京では無理ですから」


「そりゃぁそうだ 賢吾がそんなに気に入ってたって知ってたら 

今日も海に連れて行ったのにな」


「ホントですか 要さんに言っとけば良かった」

 

横で話を聞いていた実咲が 何のことかと首を傾げているのがわかっていたが 

あえて説明するのを避けた

祖母の話が触れて欲しくない方向へ行きそうで 要さん相手に海のことへと

話を逸らし話題を変えていった


実咲には 母親の二度目の離婚のことは伝えていなかった

まだ知って欲しくなかったから……

もし知ったら きっと離れてしまうから……


今までがそうだった

女の子と付き合いだすと 僕を親に紹介したがり 

相手の親は 僕の家庭環境を知りたがる

本当のことを言うと 途端に距離が離れていった


家庭に問題があるわね なんて きっと良くないことを言われているのだろう

そのくらい 僕にだって想像がついた



「焼けたから取っていいぞ 賢吾 おまえも飲むか?」



高志おじさんの声に みなが一斉に皿を持ち駆け寄っていく

僕に聞きたそうにしている実咲の顔に わざととぼけて話しかけた



「俺 ビール飲んでもいいかな 酔ったら運んでくれる?」


「えーっ 飲み過ぎないでよ 酔っ払いと帰るなんて嫌だからね」


「じゃぁ実咲も飲めばいいじゃん」


「ダメよ 誰がつれて帰ってくれるのよ」



賢ちゃんもお酒が飲める歳になったのねと 祖母が感慨深くつぶやき 

心の奥がジンと鳴った