なんてことを口走ったのだろう

もっと他の言い方があったはずなのに……

でも ほかに言葉が見つからなかった

追いかけて何か言おうとも思ったが 何を言えばいいのだろうか

突然起こった事態に上手く対処できなかった自分が情けなく

でも オロオロとするとはこんなことだろうかなんて 妙に冷静な自分もいた



「賢吾 どうしたの」


「う うん……」



実咲に あとで展望台に来いよと言っていたことを忘れていた

ぼんやりとしている僕を見て 様子がおかしいと感じたようだ



「そこで君島さんとすれ違ったんだけど 泣いてるように見えたけど」


「泣いてたって」


「賢吾 彼女を泣かせたの?」


「そういうつもりはなかったんだけど そうなるのかなぁ」


「もぉ なによ ハッキリしなさいよ 何があったのよ」



実咲のイラだった顔が目の前にあった

詰め寄られて つい本当のことを口にしてしまった



「コクられた……」


「えっ? 君島さんに? えーっ! で 賢吾なんて言ったのよ」


「うぅん……実咲しか見えないからって言った」


「そんなこと言ったの ちょっと待ってよ」


「待ってって言われてもなぁ マジで聞かれたから……」


「男って どうして女の子の気持ちがわからないのよぉ」


「なんで俺がそんなこと言われるんだよ 実咲だけだって言っただけじゃん」


「だからそれがさぁ あーっ もういいよ」



ブツブツと小言を並べる実咲の腕を引っ張って 乱暴に腕の中に閉じ込めた

まだ話は終わってないのよと いつもの実咲らしくなく抵抗してきたが 

腕の力を緩めず 大好きな髪に唇をあてた



「なぁ あそこに行かないか」


「あそこってどこよ」



展望台から見える道筋から少し奥まった場所にある ぼんやりとネオンの灯る

建物を指差すと 実咲もそれがどこだか すぐにわかったようで 

信じられないといった顔をして僕を睨んだ



「私が真剣に話をしてるときに よくもそんなこと言うわね」


「いいじゃん 俺 実咲を抱きたいと思ったからさ 

あっちのネオンの派手な方でもいいけど 

ラブホ どっちがいい?」


「合宿にきてるのに そんなところに行けるわけないでしょう 

賢吾 何考えてんのよ」


「大森と菅野もさっき行ったぜ 歩いて行けるんだってさ」


「ウッソー」


「ホント」



実咲の顔がニヤリと笑っている