葉月たちと楽しい時間を過ごしたあとだからか 誰もいない部屋に帰る気に

なれなかった

父の住まいから近いこともあり 僕の足は自然と実咲の部屋に向いていた




「可愛い妹さんね」


「はは……あっちも実咲のことを 可愛い人だって言ってたよ」



嬉しいわと 実咲は素直に嬉しそうな顔をした



「賢吾に良く似てる 目のあたりがそっくりね」


「そんなに似てる? 母親が違うんだけどね」



気負わず さらりと言葉が出てきた

言ってしまってから 実咲の顔をうかがったが

”そうだったの” と言っただけで それ以上は何も聞いてこなかった



いつもと変わらない夜の過ごし方

コーヒーを飲みながらソファにもたれ 実咲の髪をもて遊びながら

テレビを眺める

彼女の髪を触るのが好きだった

栗色をした柔らかい巻き毛は まだ一度もカラーリングしたことがない

というのが彼女の自慢でもあった


どちらからともなくシャワーを浴びてベッドに入り 当然のように

抱き合って眠る

いつもと違っていたのは 寝る前に彼女と交わした会話だけ

明日の朝 何を食べたいのか聞くように 自然な問いかけだった



「お父さんと別れたとき いくつだったの?」


「6歳」


「小さい頃から頑張ってたんだ……大変なときもあったよね」



実咲の言葉に鼻の奥が熱くなったが 黙って抱きしめることで平静を装った