適当なホテルの一室で、パソコンを開く。

結依の家はとてもいい暮らしをしていたので、お金の心配は死ぬまでないだろう。
インターネットでサクサクと検索を進める。



「新しい学校って確か・・・そうそう、稲村学園だ」



私立稲村学園高等学校。

東京都世田谷区某所にある有名私立高校、偏差値は77。
倍率も飛びぬけて高いここに入れたのは、まさに奇跡である。
シンプルで綺麗な校舎と、広々と解放感のある敷地。

申し分なく良い高校だ。



しかし、高校近辺の物件はどれも埋まっていて、中々丁度いい所が無い。

頭をひねっていると、とある物件が結依の目に留まった。



「シェアハウス・ラブガーデン」



声に出して件名を呟いてみる。
何だかラブホくさい名前なのは気のせいだろうか。

詳細を見てみると、家賃もお手頃高校生OK。
うん、ここにしよう。


あっさりと新居を決めた結依は、連絡先に向けて電話を掛けた。
しばらくコールが鳴り、カチャリと繋がる。



「はい、シェアハウス・ラブガーデンです」

「もしもし。今年から稲村学園に通う予定なのですが、そちらにまだ空きはございますでしょうか?」

「入居希望の方ですか?ええ、あと1名入れますよ。では、いつ頃こちらに来れますか?」

「あと4分程で」

「は、はあ・・・。では、こちらに着き次第、契約の手続きをして頂いて、入居完了になります。お荷物などはございますか?」

「はい、でも最低限のものなので自分で持っていきます」

「わかりました。お待ちしています」

「はい。ありがとうございました」



随分と若い男性が応対してくれたが、丁寧で優しそうだった。

新しい生活は、快適なものになるかもしれない。
淡い期待を持って、ホテルを出た。