そう言うと澤田くんは
「…偽善者」
と言って私をみた。
『私、いつも明るい澤田くんより、今の澤田くんの方が好き。
本音で言い合えてる気がする
いつもは…本当の笑顔じゃないみたいだし』
「…そんなこと、言われたの初めて。
……睨まれるの嫌いだから、早くあいつんとこ行ってくれない?」
澤田くんの目線を追うと、体育館の入り口にいた結くんが
こちらを睨んでいる。
『…澤田くん、ありがとう!また、話そうね!』
私は、奥に戻って着替えて、荷物も持ってから
結くんの方へ走って行った。
「…無理矢理初キス奪われたのに"ありがとう"とか…あいつバカ?」
ふっ、と笑う彼の笑顔はもう胡散臭い
作り物ではなかった。

