「ちがっ──〝帰るね?ありがとう〟


あーあ…せっかく翔太くんちに来たのにもう帰るんだ自分。

帰る前に学校、行かなきゃ…
鞄…学校にある。


違う、よ…こんなんじゃない


私…逃げたんだっ


自然と歩く速さが速くなる。

翔太くんの部屋から出るとドンッと誰かにぶつかった。

「もう帰るの?」


ぶつかった相手は、翔太くんのお母さんだった。

話せない私は俯いたまま会釈をして、その場からまた歩き出した。

だって、顔を上げたら泣いていることがバレるから…

どうしても上げれなかった。