―――。


「ヨゾラくん。」


「何?」


「大丈夫?」


「何が?」


「ここに居る事よ。
平気なの?」


乃莉子は、出来るだけ小声でヨゾラに話しかけた。


だが、肝心のヨゾラに全く気にする様子はなく、キョトンとして乃莉子を見ている。


「ここ、天界よ!
ヨゾラくん、悪魔でしょ?」


「悪魔だよ。それが何?
今更何の心配?
ここへ来なきゃ、イザヨイを連れて帰れないんだからさ。
分かってるはずだよね?
乃莉子って、やっぱりバカなの?」


「・・・・・!?」


「さぁて、イザヨイを探さないと。」


笑顔で辛辣な台詞を乃莉子に浴びせ、スタスタと、ためらう事なく壁をすり抜けたヨゾラ。


「ちょっ・・・ちょっと!
待ってよヨゾラくん。
置いて行かないで!」


乃莉子もそそくさと、壁をすり抜ける。


壁の向こうは、廊下であった。


右を見ても、左を見ても、長い廊下があるだけで、乃莉子にはどちらに進むかの判断は、出来そうにない。


しかしヨゾラは、迷う事なく左を向いた。