「そのイザヨイさんの弟が、何の用事があって、ここに不法侵入してるの?」


思いっきり眉を潜めて、乃莉子は聞いた。


ヨゾラは何食わぬ顔で言ってのける。


「乃莉子を側室にしに、来たんだよ。」


「そく・・・そく・・・側室?」


乃莉子の頬が、一瞬で真っ赤に染まり、体育座りの体を精一杯縮めると、ヨゾラは腹を抱えて吹き出した。


「アハハハ!冗談だよ。
僕、イザヨイにしか興味ないもん。
シラサギは好きだけど、やっぱり乃莉子とは違うね。
乃莉子。バカっぽい。」


「・・・・・・っ!?」


この姉弟、キライだわ!


ちょっとだけ、ヨゾラの言葉を真に受けて、焦ってしまった自分に、乃莉子は恥ずかしくなってしまった。


「じゃ、じゃあ、何しに来たのよ?
イザヨイさんならキャスと、天界に行っちゃったわよ。」


「お兄様の命令だよ。
その情報が、お兄様の耳に入ったんだ。
だから、乃莉子を天界へ連れて行ってやれって。
で、僕はイザヨイと魔界に帰るわけ。」


「お兄様?アマネよね?
アマネが協力してくれるの?
私どうしたら天界へ行けるのか、分からなかったから。
何てお礼を言ったらいいか・・・。ありがとう。」


「別に、僕はイザヨイを迎えに行く、ついでだから。」