再会したその日、キャスパトレイユは、当然のように乃莉子のアパートに、上がり込んで来た。


そして部屋に入るや否や、グイっと力強く乃莉子を腕の中に引っ張って、ギュッと抱きしめる。


「ちょっと!キャス!」


慌てて離れようとする乃莉子に、キャスパトレイユの口から、意外な一言がこぼれた。


「・・・ゴメン。」


乃莉子の肩に額をくっつけて、静かにキャスパトレイユは、囁く。


「俺の不用意な行動が、乃莉子を傷つけた。
ただ覇王になりたくなくて・・・何がなんでも人間を妃にしたくなくて・・・俺、絶対に妃は天使の娘にしなきゃって。
それしか考えていなかった。
自分のわがままを叶える事に夢中でさ、回りなんか見えてなかったんだ。」


「キャスはその人たちの事、好きにならなかったの?」


その言葉に、キャスパトレイユは乃莉子の肩から頭を上げて、まじまじと愛しい妃の瞳を見つめた。