イザヨイは、人差し指を顎に当てて、してやったりという顔をした。


「ふふふっ・・・。
お兄様、本気にしたかなぁ?
普通、冗談だと思うよね。
ちょっとは時間稼ぎ出来ると思うんだけど。
ヨゾラに告げ口される前に、先手打っておかないとね。
でも・・・お兄様の言葉・・・。
ムリって言ってたよね。
“ダメ”じゃなくて“ムリ”なんだ・・・。
どういう意味だろ?」


やっぱり片翼のあたし達は、結ばれないと、死んじゃうのかな。


あたし達を、二人一緒に閉じ込めておくための、方便かと思ってたのに。


「まぁ、その時はその時か!
ヨゾラには悪いけど、仕方ないね。」


それとも、悪魔と天使じゃ無理って事?


ずっと人間に変幻して、キャスパトレイユ様を騙せばいいか。


考えながらイザヨイの足は、天魔の鏡を求めて、手近な個室を探していた。


アマネの言葉も、ヨゾラの想いも、最早イザヨイの行動を阻む力には、ならないようだ。


イザヨイは、またもキャスパトレイユを目にした時の事を、思い出す。