実は人間界に戻ってから、乃莉子の頭の中は、キャスパトレイユの事で、一杯だったのだ。


腹立たしい感情がありながら、会いたいという想い。
はたまた、抱きしめてもらいたいという衝動までもが、乃莉子を苦しめる。


キャスパトレイユを忘れる為に、この数日間、夢中で仕事の中に身を置いた。


平凡な日常を好む不器用な乃莉子が、自分の気持ちに気づくのには、かなりのインパクトが必要だった。


キャスパトレイユはそれを、知ってか知らずか、ものの見事に成し遂げてみせた。


お互いの気持ちが、通じたであろうこの再会は、新たなライバルの登場で、波乱の幕開けを迎える。


忽然と姿をくらましたイザヨイが、街灯の上から、抱き合う二人を苦々しく見ていようとは、想像もしていなかったのだから。