オレンジジュースをトレイにセットすると、マスターは乃莉子が立つレジの方まで、歩いて来た。


テーブル席に座る、女子高生二人組のお客さん。

メルヘンの近くにある、高校の生徒さんだ。

乃莉子は、ブラウンにレンガ色のチェックのスカート、左胸にエンブレムが着いたキャメル色の品のいいブレザーという制服には、見覚えがあった。


その子たちの注文なのだろう。


マスターはレジ横のショーケースからケーキを二つ取り出した。



女子高生達は、チラチラとマスターに視線を送っては、恥ずかしそうに、笑いあっている。


「すぐ来るから。
乃莉ちゃん、その椅子に座って待っててよ!」


マスターの爽やかな声が店内に響くと、女子高生達は、面白くないといった表情で、乃莉子を睨んだ。


恐い・・・恐い・・・。


乃莉子は、軽く首をすくめてから、言われた通りカウンターの椅子に腰を下ろして待つ事にした。