尚もクスクスと笑いを止めない美少女は、ゆっくりと優雅に立ち上がり、乃莉子達の方へ近づいてくる。


優雅ではあるが、冷酷さを帯びたその圧倒的な美貌が、誰かに似ている気がして、乃莉子は記憶をたどってみた。


美少女が着ているのは、黒いサテン生地のドレスで、この年齢の少女が普段着にするような服装ではない。


「あなた、もしかして・・・。
悪魔?」


乃莉子は思い切って聞いてみた。


笑われるのを、覚悟で。


しかし彼女は、乃莉子が案じた笑いとは、違う笑いで答えてくれた。


「ふふふっ・・・ばれちゃった?
乃莉子は勘がいいんだね。
ばれちゃったなら、ついでに言っておこうかな。
キャスパトレイユ様の妃には、あたしがなるから。
単身で魔界に乗り込んできたキャスパトレイユ様、すご~くかっこよかったんだもん。
だから乃莉子は、キャスパトレイユ様の代わりに、そのマスターをパートナーにしてよ。
この人乃莉子の事、好きなんだってさ。
よかったね。」


一方的に言い終えると、少女は屈託ない肯定の笑顔を、乃莉子に向けたのだった。