カランカラン・・・。


喫茶店の入口のドアを開けると、おなじみのベルが響いた。


「いつもありがとうございます。
メルヘンです。」


乃莉子は店内のカウンターに向かって、呼びかけた。


すると、カウンター内ではなく、奥まった壁際のテーブル席から返事が返ってくる。


待ってましたと言わんばかりのダイレクトな台詞だ。


「待ってたよ、乃莉ちゃん。」


「あっ・・・はい。
急いだつもりだったんですけど、すいません。
お待たせしました。」


乃莉子はこちらに歩いてくる矢崎に、ペコッとお辞儀をして雑誌を差し出した。


「そんなの口実だよ。
乃莉ちゃんに会うためのね。」


「えっ!?」


いつもと違う矢崎の雰囲気に、乃莉子は一歩、後ろに下がった。