ライラはキャスパトレイユの隣から立ち上がり、椅子に座るトルティナに歩み寄ると、腰をかがめる。


「トルティナさん。」


ライラは諭すように、トルティナの潤んだ瞳を見つめ、ゆっくりと左右に首を振った。


その仕草を見てトルティナは、コクンと頷く。


トルティナの背中に手を添えて、ライラは立つように促した。


カタンと椅子が動き、立ち上がったトルティナとライラは、ひざまずくキャスパトレイユに一礼して、王宮の一室を後にした。


静寂に包まれた部屋の中で、大きく息を吐き出すと、機敏に立ち上がったキャスパトレイユ。


しばらく物思いに耽るように、上を向いて目を瞑る。


そして、何かを吹っ切るようにパシッと、自分の両頬を叩いた。


「よし!
待ってろよ、乃莉子。」


気合いをいれたその表情は、既にいつもの自信に満ち溢れた、俺様王子そのものであり、キャスパトレイユ本来の姿だった。