乃莉子がバルコニーの先に進み出た事で、天使も悪魔も『お~!』という雄たけびにも似た声をあげた。


天使と悪魔の期待を一身に背負って、乃莉子は背中に与えられた、その白き大きな翼を、ファサァと柔らかく広げた。


すると、今まで盛大に聞こえていた歓声が、ため息と共に静かになったではないか。


上空に舞い上がり、柔和な笑みを浮かべ、舞い踊る乃莉子に、天使も悪魔も声を出す事も忘れるほど、見入っていたのだ。


なんと美しい光景であろうか。


一つ翼を羽ばたかせる毎に、キラキラと舞う金色の粉は、乃莉子を見上げている全ての者に降りかかり、先ほどの花びらと相まって幻想的に美しい。


天使は勿論であったが、悪魔達のその感動たるや、自然に涙が頬を伝う程であった。


天界を初めて目にした悪魔達は、まず眩さに面食らった。


魔界の景色は常に、昼夜問わずグレーであったからだ。


こんなにも、住んでいる世界が違う事に、戸惑うのは当然であろう。