軽く無視されたキャスパトレイユは、地団太を踏まんばかりの様子であったが、隣で乃莉子がクスクスと笑っている事に気がついて、ふっと肩の力を抜いた。


「舞えそうか?」


優しいハスキーボイスで、キャスパトレイユは乃莉子に問いかける。


「・・・うん。」


今ので、かなり和んだ乃莉子は、静かに頷いた。


じっと乃莉子を見つめてから、キャスパトレイユは乃莉子を抱き寄せる。


「ちょっと、キャス。
皆が見てる・・・恥ずかしいよ。」


「見せてやればいいさ。」


キャスパトレイユはそう言うと、しなやかな両手で乃莉子の頬を挟み、自分の方を向かせた。


温和な瞳が、真っ直ぐに乃莉子を見ている。
乃莉子もその瞳に吸い込まれるかのように、目を反らす事が出来ない。


するとキャスパトレイユが、ニッと笑った。


「しっかり見てるから。
乃莉子の、華麗なる舞を。」