一際広いバルコニーの、豪華な内窓が開け放たれると、それまでの歓声を凌ぐ音量が一斉に湧きあがり、空気が割れんばかりの振動を起こす。


数秒後、厳かにゆっくりと、キャスパトレイユと乃莉子が、寄り添ってバルコニーから姿を現した。


その初々しくも仲睦まじい姿に、天使達は手にしていたかごから、2人めがけて、歓声と共に祝福の花びらを乱舞させる。


雨の様に、空から花びらが降ってくるその光景を、幻想的に感じながらも、乃莉子はこの後の大役に、緊張を隠せないでいた。


実は、極度のプレッシャーで乃莉子は、立っているのもやっとの状態だったのだ。


キャスパトレイユが、いつも以上にぴったりと寄り添うように乃莉子の隣に立っているのは、しっかりと腰に手を添えて乃莉子が倒れないように、支えていたからであった。


羽ばたきを浴びせる舞というものが存在し、それを舞わねばならないと聞いた時、乃莉子は呆然と立ちすくんだ。