「でもさ、キャス。」


乃莉子は複雑な笑顔のままで、メイドが待つカーテンの奥へ、ドレスと共に入って行く。


そして着替えながら、また話を元に戻した。


「お互いの考え方は違うかもしれないけど、こうやって共存しているのには、きっと意味があると思うんだ。
会議で、相手を否定してしまうのは簡単だけど、ちょっとだけ耳を傾けてみたらどうかな。
・・・そうだよ。
それこそ、私の羽ばたきを、天使と悪魔が一緒に浴びるのは、天使の考えである善行だって、考える事は出来ない?」


「・・・・・。」


「ダメ・・・かな。」


「俺たちは、どこまで行っても平行線だよ・・・。
きっと・・・何をしても・・・。
悪魔は基本、悪だ。」


「そんなの、やってみなくちゃ分からないよ。
今だって、キャスが選んでくれた、このドレス・・・。」


乃莉子は本当は、このクリーム色のドレスを、そんなに気に入ってはいなかったのだが、キャスパトレイユの見立てならと、試着した。