Different world story






 だけどそれを乗り越えて、戦ってよかった。

 だって、みんな生きてる。

 賊軍が、兵士が、街の人々が花火の音に起き上がる。

 そして、彼が、生きている。


「……ノアが、死ななくてよかった……っ」


 いなくならなくて、よかった。

 それが、ミヤコにとって、何よりの救いに思えた。

 何度も「よかった」とつぶやきながら、止め処なく涙を流すミヤコ。

 その様子を黙って見つめていたノアは、そうっと、ミヤコの手を離した。

 離して、抱き締めた。

 頭だけじゃない、ミヤコの背中に手を回し、ぎゅうっと、強く。


「……一回、こうやってミヤのこと、抱き締めてみたくて。」

「……え、」

「ありがとう。」


 ノアは言った。

 ミヤコの耳元で、噛み締めるように、言った。


「――この国のために、戦ってくれて、ありがとう。」


 ――ミヤコ。




 強く強く抱き締めたまま。

 彼はたしかに、騎士の名前をそう呼んだ。