Different world story





 どういうわけか、目から涙が溢れ出す。それは次々と頬を伝った。

 ノアが驚いたように駆け寄ってくる。

 泣かれると戸惑うと言っていた、だから泣くのはやめなきゃいけない。

 ミヤコは必死に涙を止めようとする。だけど涙腺は閉まらない。

 そんなミヤコの前にしゃがみ込みんだノアは、そっと手を伸ばし、ミヤコの右手をとった。

 優しく握りしめた手。ミヤコはノアを見る。

 視界がぼやけて、よく見えない。


「……右手、ぼろぼろ。」


 ノアは困ったような顔で、笑った。

 長時間剣を握っていたミヤコの右手は、見るに堪えないほど傷ついていた。

 ミヤコはそれを知られるのが、どうしてか嫌だった。


「……るっさい。」


 悪態をつき、右手を引っ込めようとする。

 けれど、ノアが握って離さない。

 ミヤコは成す術もなく、とうとう右手で、ノアの手を弱々しく握った。

 その手のぬくもりに、涙が更に溢れ出す。


「……よかった、」

「ん?」

「ノアが、みんなが、生きてて、よかったっ……」


 よかった。

 それは心からの言葉だった。

 本当はどこかで怖かったのだ。ミヤコは戦が初めてだった。

 誰かが傷つく。誰かが血を流す。誰かが、いなくなる。

 そんな恐怖を、初めて味わった。