少女はミヤコを見つめて、ぽつりと言った。
「……騎士さま、泣いてるの?」
ミヤコは首を振った。
剣を持っていないほうの手で、目を擦る。
そうかあたしは、今ひとりじゃないのか。
心中で唱えたその言葉は、不思議と力になっていく。
ミヤコは顔を上げた。彼女の瞳は、陰り無く凛としていた。
「泣いてないよ。」少女の問いかけに、ミヤコは答えた。
「――だって、あたしが泣くと、国が泣いちゃうからね。」
―――――
ガキンッ! と甲高い金属音が響く。
ミヤコの舞うような剣術が敵の合間を縫って行く。
意表を突かれた敵の剣が敷石に跳ね返って転がる。
ミヤコはそれに目もくれず次へ向かう。
ノアはナイフを見えぬ速さで投げつける。
ナイフは敵の手首を貫き、相手は武器を取り落とす。
その間を狙い投げるナイフが足の腱を切り、次々戦闘不能にしていく。
一般民を人質にとる敵の武器をハルトの魔法が狙う。
橙色の炎が一瞬にして武器を燃やし、唖然としている敵の目前で強い光を放つ。
一時的に視力を奪い、その隙に気絶させていく。
馬がない今、頼れるのは自分の足だ。そして彼らの足は、止まることを知らない。
数多の賊軍と、たった三人の戦場。
戦線の有利は賊軍かと思われていたが、しかしその“たった三人”は賊軍を圧倒していた。


