Different world story





 ミヤコは二人に背を向け、走り出した。

 誰かを助けられない悔しさは、昨日、痛いほど知ったのだ。

 もう、あの悔しさは味わいたくない。

 助けられる人が居る、だったら助けるほかに、何がある?


 賊軍がひとりの少女を捕えていた。ミヤコはそれを見つけると、迷うことなく突っ込んだ。

 相手がこちらに気が付く。ミヤコを見るとにやりと笑った。戦の目だ。

 ミヤコは剣を構える。相手も武器を構える。そして振りかざされる。今度はミヤコがにやりと笑った。

 スッ……と。静かに剣を傾ける。

 そのまま、まるで広場の踊り子のような軽やかさで、ミヤコは賊軍の合間を抜けた。

 脇に少女を抱えて。

 その間、一分足らず。


「がああぁあッ!」


 背後で断末魔が響く。血飛沫が上がった。ミヤコは少女の目を隠した。


「……騎士さま?」


 少女が呆然としたような声で、ミヤコを呼んだ。

 その声に聞き覚えがあったミヤコは、少女の顔から手を退ける。

 よく見れば、昨日街中でノアにぶつかった、あの少女だった。

 あの時は言葉を交わさなかったが、ミヤコのことを覚えていたようだ。

 途端にミヤコは、泣きだしそうになった。


「……よかった」ミヤコは少女を抱きしめた。「助けられて、よかった……っ」


 少女はその言葉の意味がわからないようだった。

 わからなくていい、とミヤコは内心で願った。


 しかし感傷に浸るヒマはない。