「どうする。このままだと街が危ない。」
「ミヤ、戦う気?」
「他にどうしろっていうんだよ。」
「ミヤさん、危ないですっ! 見張り塔がすでに事を確認していると思います、兵を待ちましょうっ!」
きゃあっと、どこかで悲鳴が上がった。
ミヤコは振り向く。煙がうすらいだ中、一般民の女性が賊軍に捕まっていた。
それだけじゃない。視界を覆うものがなくなった今、そこかしこで広がる惨劇が目の当たりになった。
連れて行かれる少女、斬り倒される男性、暴行を受ける女性、荒らされていく店、弧を描く血飛沫、敷石を伝う血液。
赤、赤、どす黒い赤。
「……待て、って?」
ミヤコは、押し殺した声でつぶやいた。
「この惨劇の中でただ、待てだと?」
「ミヤ、」
「俺は剣を持ってるッ!」
声を荒げた。
振り返った先の、ノアとハルトが息を呑んだ。
ハルトはミヤコが隣国の姫であることを知っている。だから危ないと言ったのだ、言ってくれたのだ。
しかしミヤコは、だからこそであると思った。
一国の姫が、誰かが傷つき殺されていくのを、黙って見ていていいのかと。
「今この場で戦えるのは俺しか居ない! 武器を持ってるクセに、兵が来るまで指をくわえて見てろだと!?」
冗談じゃない、と吐き捨てた。
「戦える者が戦わずして、一体誰が戦うっつーんだッ!」
ミヤコは剣を抜いた。
「無謀でもなんでもいい。目の前の人を助けられないことに、後悔なんてしたくない。」


