「それでは、夜の街を案内するとしますか。」
「……じゃあ、お言葉に甘えて。」
ミヤコが返答すると、ノアは微かに笑んだ。その姿が、あたたかい橙色の光に照らされる。
一瞬、胸の奥が騒がしくなった。
いやいやなんだこれは、とミヤコはノアから視線を逸らした。
体験したことのない胸の内の騒がしさに、図らずも戸惑う。ミヤコはその感覚に無知すぎた。
ノアが前を歩き出す。ミヤコはたった今覚えた感覚に首を傾げ、そして振り払うようにしてノアの後を追いかけた。
ノアに案内してもらった屋台で美味しそうな料理を買い、二人は広場の周りに設けられたテーブルと椅子にお邪魔した。
人で溢れる広場は騒がしく、けれど嫌な気分になるような騒がしさではなく、ミヤコは椅子に座って料理を食べながら自然と笑みがこぼれた。
「そんなに美味しい?」
その笑みを料理のためだと思ったらしいノアが、食べるのをやめてミヤコに問う。
ミヤコは思わずうなずいた。美味しいのは事実なので、嘘にはならない。
「うん。美味い。」
「そっか、よかった。」
ノアは再び料理に目を向けながら、わずかに口元を緩めた。
最初に声をかけた時は、性格悪そうな奴だなと思っていたのにな、とミヤコは料理を食べながら、ノアをこそりと見つめた。
一緒に居る内に表情が顔に出るようになり、小さい子に優しく、見惚れるような笑みを浮かべ、お互い見ず知らずとはいえ、迷惑そうな顔ひとつせずにミヤコを案内してくれている。
実はすごくいいヤツなんじゃないだろうか、とミヤコは思う。
しかしながら、大金ではなくともお金を払っているのはミヤコなのだが。
だとしても、この街を満喫できたのはノアのおかげだ、文句は言うまい。ノアも自分で「お返しに」と言っていたのだし。


