愛するが故に・・・

そして、この男は話をしたくないのだと思い、口を開かなかった。

私は近くにある、ナプキンを見て、昔を思い出した。


“そういえば、母が昔これでいろいろな動物とかを作ってくれたなぁー…”

そんなことを考えながら、鶴やペンギンを作り、男のグラスの近くに置いた。


男はそれを見て、一度目を大きく開け、そして口元を緩めた。

無表情だった男が初めて表情を変えた時だった。


男はそれからすぐにマネージャーを呼べといった。
私は何か怒らせるようなことをしたのかと心配になった。



呼ばれてきたマネージャーは男に要件を聞いた。
男はまた一言。

「こいつ」

といった。


私は、はっ??って感じ。
何がこいつなのだろうか…

しかし、マネージャーは理解したようだった。

何が??私の頭の中は???がいっぱいだった。
そんな私をマネージャーはわかったように、


「指名いただきましたよ。加奈さん」


そういった。

この日、この男は私の指名客となったのだ。