「ちょっと、佑輔くん。この腕放して」
さすがに完全に抵抗し始めた葵と
『売られた喧嘩は買ってやろうじゃねぇか』と
敵意むき出しの俺に睨まれ、
佑輔という男は葵から腕を離した。
俺はすかさず葵を手繰り寄せ、
「何のつもりだ?」
「ちょっ…潤くん」
「葵は黙ってろ」
「何をそんなにイライラしてるんですか?」
「はぁ?!」
俺はさらに鋭い眼差しを向けると、
「あーはいはい、邪魔者は退散しますよ。じゃあ、先生。お世話になりました~」
男は小馬鹿にした感じに笑みを浮かべ、
軽く手を上げ、マンション内へと消えて行った。
エントランス前で抱きしめている俺。
駅前という事もあり、通行人も多い。
通り過ぎる人の視線もあるので、
「葵、とりあえず家に帰るぞ」
「あっ……うん」
俺は葵の手をギュッと握りしめ
マンションとは反対側の駅へと歩き出した。



