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十日間があっという間に過ぎ去り、王宮へと戻る日を迎えてしまった。
連日の食事の甲斐もあって、ソウォンの頬が少しふっくらとしたようにも見える。
元々痩せこけていたのに、慣れぬ宮中暮らしでやつれたソウォンを、少しでも健康的にしたかったヘスは、満足げな表情でソウォンの手を取る。
「世子様、皆が見ております」
「良いではないか、夫婦なのだから」
「っ……」
男装姿で馬に跨り、颯爽と馬を走らせて来たが、帰りはゆっくりと共乗りで。
もしかしたら、身籠る兆しがあるかもしれぬと思ったからである。
清和尚の言葉が頭から離れないヘス。
心を穏やかに過ごすのが良いというのだから、ゆったりとした気分で過ごすのが良いのだと思った。
女官や護衛達は、すっかり二人の仲睦まじい姿にも慣れ、微笑ましく見守っている。
宮中は常に陰謀が渦巻く場所。
だからこそ、この二人のように愛し合う姿を目にすることが出来るのは、平和な証拠だから。
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十日ぶりに王宮へと戻ったヘスとソウォン。
王と王妃に帰城の挨拶をする為に、康寧殿(王の居所)を訪れた。
「どうであった?楽しむことが出来たか?」
「はい、王様。まだ咲き始めでしたが、二人の想い出でもあります、山茱萸を愛でることも出来ました」
柔らかい視線を向けられ、ついソウォンと見つめ合う。
そんな二人を眺め、王妃は満足げな表情を浮かべた。
「まだ寒い季節ゆえ、体を冷やさぬよう、嬪宮気を付けるように」
「はい、王妃様。お心遣いに感謝致します」
「道中、疲れたであろう。ゆっくりと休むが良い」
「はい、王様。これにて、失礼します」
深々と拝礼し、資善堂へとその場を後にした。



