翌朝。
久しぶりに政務から解放されたヘスは、ソウォンを抱き締めたまま朝を迎えた。
宮中で共寝をした翌朝でも、のんびり寝ていられないのが世子の役目。
陽が上るのと同時に起床し、すべき事が山のようにある。
それらから数日間でも解放されただけでも有難いのに、こうして愛妃を腕に抱き目覚めることが出来る倖せ。
この上なく、幸福感に満ち溢れている。
久しぶりに愛妃を堪能した昨夜。
国事と言われる世継ぎの懐妊を果たすべく、温陽にやって来たからには、何もせずに戻るわけにはいかない。
事前に尚宮から、ソウォンの月の物の周期を逆算して貰い、この温陽に合わせたのだから。
まだ寝ているソウォンの髪を優しく撫でて、美しい寝顔を見つめていると。
抱き寄せている腕に頬を摺り寄せて来た。
「愛くるしいやつだな」
思わず顔が綻ぶ。
陶器のように白く艶やかな肌。
触り心地がよくて、ヘスの指先が首筋から襟元、その先へと伝うと。
さすがのソウォンも気付いたのか、瞼が開いた。
「起こしたか?」
「……まだ夜でしょうか?」
「もう陽が上ってる」
「それは大変っ!」
「ここは王宮ではないから、もう少し休んでても平気だ」
飛び起きようとしたソウォンをきつく抱き締めた。
「食事の用意が出来たら、声がかかることになっている」
「……そうなのですね」
「どこか痛む所は無いか?」
「と、仰いますと?」
「昨夜は手加減せずに抱いたゆえ、そなたの体が悲鳴をあげてるのではと思って」
「っ……」
昨夜の出来事を思い出したソウォンは、恥ずかしさのあまり布団で顔を隠す。
「そなたの奚琴の音色と同じくらい、良い音であったぞ」
「っ……」



