Special Edition


衝立の脇に用意されている衣でソウォンを包み、自身は素早く衣に袖を通す。

のぼせ気味のソウォンは少し足下がおぼつかずふらふらと。
そんなソウォンを抱きかかえ、湯殿を後にし、寝所へと向かった。

「世子様っ」
「部屋は温めてあるか?」
「はい」
「嬪宮がのぼせ気味ゆえ、当帰芍薬散を」
「承知しました。直ぐに用意致します」

ヘスは足早に部屋へと向かいながら、ソウォン付きの尚宮のチョンアに指示を出す。
寝所に入ると、寝床も温められており、ソウォンの好きな白檀の香まで焚かれている。

ソウォンの濡れた下着(ソッチマ)を脱がせようとするヘスの手にソウォンの手が重なった。

「濡れたままでは風邪を引く。人払いはしてあるから……」
「ですが……」

恥じらうソウォンを宥めるように、ヘスはソウォンの手を優しく撫でて、室内の所々に置かれている燭台の灯りを消した。
夜具の周りに二つだけ残して……。

「これでよかろう?」

一気に薄暗くなった室内。
僅かに照らす蠟燭の灯りが優しく揺らめく。

ソウォンはヘスに背を向け、衣を羽織ったまま、中に着ている下着を脱ぎ、用意されている夜着を身に纏う。
ヘスもまた、濡れている体を軽く拭き上げ、夜着を身に纏った。

「世子様」
「入れ」

チョンアがソウォンの煎じ薬を手にして現れた。
それをヘスに手渡すと、床に散乱する濡れた衣を拾い上げ、部屋を後にした。

ヘスは匙で薬を掬い、息を吹きかけ冷ましていると。

「世子様のお手を煩わせるわけには」
「私がしたいのだ。気にするでない」

ヘスは匙をソウォンの口元へと運ぶ。
その表情は、愛する女人(ひと)へ向けられた優しい笑みだ。